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人生を変えたセツのこと

4/18/2021

 
大学生だったハタチのころ、「セツモードセミナー」にという絵の専門学校(夜間)に通っていた。
 校長の長沢節は、ファッションイラストレーターの草分けとされる人だった。でもわたしがセツモードセミナーを選んだのは、節先生のイラストに惹かれたからではない。入学試験がなかったこと、授業料が安かったこと、夜間コースがあったこと、わたしが好きなイラストレーターにセツ出身の人が多かったことが理由だった。

 情報もあまりなく、よく調べもせず、あまり考えもせず、二十歳になって半年が経った頃、まとまった奨学金が入るという「棚ぼた的幸運」が振ってきて、親に内緒で秋学期から通い始めた。
 夜間コースだったので、社会人が多かった。性別も年齢も職業もさまざまな人たちが集い、セツ先生と一緒にモデルを囲んでスケッチをする。鉛筆ドローイングなので、一枚を20分くらいで仕上げて、一回の授業で何枚か描いて、それで終わり。
 特に講義などもなかったけど、節先生と同じ場で同じモデルを見て描くという共有体験が嬉しかった。セツ先生のタッチを覗き見しながら描くので、生徒のスケッチはみなセツ調のヒョロヒョロしたラインになる。「セツっぽさ」は自然と身につくようで、セツ出身者の絵は、どこか共通した雰囲気を持っている。
 わたしはここで「自由な空気」の心地よさを知った。

 休憩時間には、中2階にカフェが出現して、カフェオレを1杯100円で飲むことができた。節先生は缶コーヒーを毛嫌いしていた(アルミ缶を口に当ててコーヒーを飲むのははしたないという理由だったような)ので、100円のカフェオレも陶器のカップで供された。カフェオレという飲みものを知ったのも、セツだった。

 1999年に節先生が亡くなり、セツモードセミナーは2017年に閉校。その日々を懐かしく思い出したのは、今月初め、成城にあるカフェギャラリーで開催された知人の個展に行ったからだ。コロナで1年延期されての開催だった。
 ある会場で彼の絵を見たとき、「セツっぽさ」を感じて声をかけたら、やはりそうだった。わたしより十歳ほど若い彼が入学したころは、出願者が多く、入学は抽選だったとか。落選した彼は、一年待つことになった。でも入学後は研究科まで進み、ゲリラ(研究科で優秀と認められた人の呼称)になり、今でも講師だった先生(わたしのときから講師だった方)と親交があると話していた。

 優秀な彼とは違い、わたしは大学卒業に合わせてセツを中退した。大きな決断も目標も努力もなくセツに入ったけれど、わたしの人生はセツに入ったことで塗り替えられたのかもしれない。
 セツでイラストを描いていたことで、就職した小さな出版社で編集とイラストと両方の仕事をさせてもらえた。フリーになったとき、署名原稿やイラストの印刷物が自己PRに役立った。セツ出身という履歴を気に入られ、仕事をもらったことも。
 夫とはセツで出会った。セツに行かなければうちの家族は存在しなかった。

 人生って不思議。小さな決断が未来を変える。Life is choices!


    grulian's journal

    ぐるりのかかわりをシンプルに、ひっそり世界とつながりながら暮らしたい。
    模索する日々のできごと、胸のうちを気の向くままに。
    タイトルの「手考足迷」は河井寛次郎の「手考足思」に敬意を表して。

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